皆さん、おはようございます。令和4年度、2022年度の始業の日を迎えました。久しぶりの対面形式での集会、最も喜んでいるのは私かもしれません。この空気感をとても心地よく感じます。人の息づかいや集団の発するオーラなど、一堂に会してこその実感は他に替え難いもの。大切にしたく思います。
新型コロナウイルス感染症の収束がなかなか見通せない、いわゆる「コロナ禍」での制限ある教育活動が実質3年目となります。先の2年間での学びや実践をもとに、未知から既知の領域へと徐々に移行しつつあるコロナに対して、人類の英知を駆使して対策に取り組み、学びの機会をしっかりと確保しつつ、ICT活用等の様々な工夫によってむしろ学びの一層の充実を図っていきたいと考えます。マスクの正しい着用や黙食の徹底等、「我が身を守る」基本的な感染症対策について、皆さんの協力をお願いします。
コロナ対策を含め、こうした集会の時機を使って皆さんに伝えたいことは十も二十もありますが、今日は一つに絞って伝えます。
それは、「校歌に謳われる精神を共有し、体現しよう」ということです。体育館にも掲げられている校歌、意義や目的を明確に理解し、「至誠」をもって取り組めば自ずと良き「徴(しるし)」は顕れると思います。それが伝統の力、出雲の出雲たる所以です。今日は、我々出雲高校関係者のバイブルとも言える校歌を探究し、意志共有を図ることに挑戦してみたいと思います。
まずは、校歌で焦点化される背景について考えます。一番で「翠色濃き鷹の沢 久徴園に鳥啼きて 松吹く風のさやかなる」とされるのは、学び舎の近景(共有する学習空間)です。二番で「若葉かがよふ一の谷 簸川平野の果遠く 雲むらさきに照りにほふ」とあるのは、学びの園の徐々に広がりゆく遠景(出雲地域の風景)です。一、二番ともにここを「我等の出雲」と称しており、それぞれで「友垣よ」と呼びかけます。意図を持って整備されてきた久徴園を筆頭とする近しい自然、そして豊かに包み込む広大な自然、落ち着きある絶好の学習環境が保障されていることを喜び合いつつ、師弟、校友相睦み合って、学びを謳歌しましょう。
次に、呼びかけについて。命令形ではありながらも願いを込めた呼びかけとも言えるのが、一番の「仰げ仰げ」と二番の「歌へ歌へ」であり、生徒達に対して、「うつむくのではなく、上を向いて堂々と、そして誇らしく表現せよ」との先人の思いが伝わってきます。仰ぎ見つつ大切にしたいのは、「光あまねきこの舎」に満ちあふれる「正義と真実」であり、歌い上げたいのは「命みなぎるこの園」に備わり続ける「平和と友愛」です。無益な諍いや人命をも奪う戦争などとは一切無縁のこの恵まれた環境の中で、縁あって集った仲間達とともに、「正義と真実」を追求し、「平和と友愛」を貫いていこう、貫いてほしいとの決意や願いが込められていると思います。重視される「正義」は、正しい在り方であり、物事の意義や目的に通じます。「真実」は、真理や誠とも言えます。「平和」はピースであり、「友愛」は昨年度から呼びかけている「愛・~合い」そのものです。「正義と真実に満ちた、平和で豊かな社会の実現のために、やるべきこと、やらなければならないことに、友と協働して愛をもって誠実に取り組む」ことが求められるのでないでしょうか。この考え方は、久徴の伝統精神「至誠」と極めて親和性が高いと思います。我々は、この上ない誠実さをもって、この自治の学園、友愛協和の学園をしっかりと築いていきましょう。
新入生からは新学習指導要領が実施となり、個人端末を学用品として所有するなど、新しい教育が行われます。たしかに時流は変化を要求しますが、ただ流れに身を任せるばかりではなく、本校の伝統は大切に継承しつつ、イノベーションを図っていきたいと考えています。探究した校歌、そこに謳われるメッセージを忘れずに、みんなで堂々と歌い上げる日々を楽しみましょう。
今後も折につけ、皆さんとともに、校歌にもある「我等の出雲」の伝統継承とイノベーションのあり方についても探究していきたいと考えています。習得・活用の先にある探究、課題研究だけではなく教科学習や部活動など、いつも意識しながら共に取り組みたい、そんな共学共創の学校であることを願っています。ここに集う生徒、教職員は皆、隔てなき「我等」。この鷹の沢にあって、正義と真実のあまねき光を仰ぎつつ、平和と友愛のみなぎる命を高らかに歌い上げながら、確かな学びの習得を目指す同志。本日を契機に、校歌の歌い方に変化が生じ、日常の意識が整ってくれると嬉しく思います。以上、「我等」で創立102年目のスタートを切る決意を共有し、始業の言葉とします。
令和4年4月8日 島根県立出雲高等学校 校長 多々納雄二